税理士登録に必要な実務経験とは?正しい経験の積み方と転職に有利な実務経験を紹介

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税理士登録に必要な実務経験とは?正しい経験の積み方と転職に有利な実務経験を紹介

税理士登録をするためには、必要な試験に合格するだけではなく、実務経験が必要であることは、税理士を目指している方たちはよくご存じのことと思います。

必要な実務経験は2年間と定められていますが、どのような業務がカウントされ、どのような業務がカウントされないのか、判断に迷うことも少なくありません。また、在職証明書の取得方法や、将来の転職に有利な実務経験の積み方についても知っておくべきポイントがあります。

本記事では、税理士登録の実務経験に関する疑問をすべて解消し、キャリアアップにつながる方法を詳しく解説します。


【目次】

税理士になるための実務経験とは何か
・税理士登録に必要な実務経験は「2年間、かつ1,000時間以上」
・実務経験にカウントされる業務内容の具体例
・実務経験にカウントされない条件と誤解しやすいケース

実務経験の積み方と在職証明書について
・会計事務所で実務経験を積むメリットと求人の探し方
・一般企業や非正規雇用でも認められる実務経験の条件
・在職証明書の正しい取得方法と記載必須事項
・複数職場での実務経験合算と証明書が取れない場合の対処法

転職に有利な実務経験の積み方
・転職市場で評価される実務経験の共通ポイント
・大手・中小それぞれの事務所で得られる経験の違い

実務経験を武器に、税理士としての未来を切り拓こう


■税理士になるための実務経験とは何か

■税理士になるための実務経験とは何か
税理士登録に必要な実務経験は「2年間、かつ1,000時間以上」
税理士になるための最も一般的な方法は、税理士試験に合格し、2年以上の実務経験を積むことです。具体的には「租税または会計に関する事務に2年以上かつ1,000時間以上従事していること」が税理士登録の要件となります。

この実務経験は連続している必要はなく、複数の期間や職場での経験を合算することが可能です。また、税理士試験に合格する前に勤務していた実績も含めることが出来、雇用形態も正社員に限らず、パート・アルバイトでも問題ありません。

週5日、1日8時間の正社員で1年カレンダー通りに働いた場合、おおよその勤務時間は2000時間となります。しかし年数が足りていないこと、業務内容によっては実務経験としてカウントされないことから、試験勉強にかかる時間と合わせ、計画的に経験を積むことが大切です。
ある程度試験合格のめどが立つまでは、パート・アルバイトで勤務時間を抑えながら専門学校や大学院に通い、勉強と仕事を両立するという方も増えています。


実務経験にカウントされる業務内容の具体例
税理士の実務経験としてカウントされる業務には、明確な範囲があります。
会計事務所や税務官公署での事務はもちろん、会社などでの税務事務、貸借対照表と損益計算書を用いた会計処理業務が基本となります。

より具体的には、仕訳帳から各勘定への転記作業、元帳整理と日計表・月計表作成による記録確認、決算手続き、財務諸表作成など、会計に関する知識を要する業務や、所得税や法人税の申告書作成といった税務に関する業務全般が含まれます。

また、税理士登録の際は、これらの業務に従事したことを証明する在職証明書の提出が必要となります。以下の記事では税理士登録について詳しく解説しておりますので、よろしければご覧ください。
税理士登録の手続きを徹底解説!試験に合格してもすぐには登録できない?


実務経験にカウントされない条件と誤解しやすいケース
税理士の実務経験として認められない条件があることをご存知でしょうか。

「特別の判断を要しない機械的な事務」は実務経験としてカウントされません。
具体的には、簿記会計の知識がなくてもできる単純な事務や、電子計算機を使用した単純入力業務などが該当します。

実務経験は通算で計算されますが、時間外勤務(残業時間)は含まれず、通常の勤務時間内の業務のみが対象となります。
また、会社の経理部門で勤務していた場合でも、租税や会計に関する業務以外の事務に従事した時間は除外し、該当する事務のみを抽出して積み上げ計算する必要があります。

アルバイトなどの非正規雇用でも、勤務実態に応じて積み上げ計算が可能です。ただし、計算には上限があり、1日の従事時間は7時間まで、1月の従事時間は154時間までと定められています。これは不当に短期間で実務経験を満たすことを防ぐための基準です。


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■実務経験の積み方と在職証明書について

■実務経験の積み方と在職証明書について
会計事務所で実務経験を積むメリットと求人の探し方
会計事務所で税理士の実務経験を積むことは、税理士登録への最短ルートと言えるでしょう。前述の通り、税理士登録のために実務経験には認められるものとそうでないものがありますが、会計事務所での業務はほとんどが対象となるため、多くの方がこの方法を選択しています。

実務経験を積むための会計事務所選びでは、資格取得への支援体制をチェックすることが重要です。
「資格取得支援制度」や「資格手当」などの制度を掲げている事務所では、資格取得に向けて専門的なアドバイスが得られやすい環境が整っています。
働きながら試験勉強を両立させたい方は、こちらの記事も参照してみてください。
働きながら税理士を目指す人の会計事務所選び
税理士を目指す方のキャリアパスについて

また、将来独立開業を考えている場合は、面接時に正直に伝えておくことも検討しましょう。
もちろん、すぐに辞めてしまう人を採用しづらいと思う会計事務所もありますが、すぐにではなく数年経験を積んだ後であれば応援してくれる会計事務所も多くあります。
あらかじめ自身の志向、ビジョンを伝えておくことで、代表から独立に役立つノウハウを意識的に学べたり、独立後の顧客が少ないタイミングで支援をもらえたりと、信頼関係を築きながら実務経験を積むことのメリットも大きいでしょう。


一般企業や非正規雇用でも認められる実務経験の条件
税理士の実務経験は、一般企業の経理部門や非正規雇用でも認められます。
具体的には、簿記上の取引仕訳、勘定への転記、決算処理、財務諸表作成などの業務に従事していることが必要です。

アルバイトやパートタイムでも、これらの条件を満たせば税理士の実務経験としてカウントされます。例えば、税理士事務所で週3日のアルバイトとして働いていても、会計や税務に関連する業務を担当していれば実務経験の対象となるのです。

実際に行った業務が実務経験として認められるか否かは、在職証明書と税理士会との面接により個別に判断されます。そのため、勤務先では会計税務に関連する業務の機会があれば積極的に担当し、自分の言葉で何をしたか、具体的な説明が出来るよう業務内容を記録しておくことが重要です。


在職証明書の正しい取得方法と記載必須事項
税理士登録には在職証明書の取得が必須ですが、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

まず、証明書には勤務先代表者の署名と実印の押印が必要です。
複数の職場で実務経験を積んだ場合は、それぞれから取得する必要があるため、退職時には円満な関係を維持することが大切です。退職代行など、こちらから連絡を絶つような辞め方をしてしまうと、快く書類の発行に応じてくれないかもしれません。

また、在職証明書には印鑑登録証明書の添付も必要です。これは申請書提出日から3ヶ月以内に発行されたものでなければなりません。そのため、退職時に税理士登録要件が整っている場合以外は、先に在職証明書を入手しておくのは難しい点に注意が必要です。

在職証明書をもらえない(勤務先が発行を拒否する、当時の勤務先が廃業・倒産などで存在していないなど)場合は、同時期に勤務していた同僚に証明を依頼できる可能性があります。その際は、同僚の印鑑登録証明書や社会保険加入記録などの追加書類が必要になります。
対応方法は所属予定の税理士会によって異なるため、事前に確認しておきましょう。


複数職場での実務経験合算と証明書が取れない場合の対処法
税理士登録に必要な実務経験は連続している必要はなく、複数職場での勤務期間を合算できます。

実務経験証明には日税連所定の在職証明書が原則必要ですが、会社倒産などの事情がある場合は別途対応が可能です。倒産企業の場合は閉鎖事項証明書も必要となるでしょう。
一般企業で働く場合は職務概要説明書と組織図の添付が必須です。
これらの書類には、経理業務であることを証明する内容や、独立した経理組織で働いていたことを示す内容を記載します。
非正規雇用の場合は勤務時間の積上げ計算を証明する資料が必要があります。勤務時間が記載されている給与明細やタイムカードなどは、退職前に必ず回収しておくようにしましょう。
証明書に不備があると申請書類全体が受理されないため、正確な記載を心がけてください。

在職証明書の発行を拒まれる場合は、税理士会に相談して支持を仰ぎましょう。何らかの対応策は用意されていますが、税理士会によって若干の違いがあるため、所属予定の税理士会に直接相談することをお勧めいたします。

なお、実務経験の証明について、さらに詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
税理士登録には実務経験が必要!証明方法を解説します


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■転職に有利な実務経験の積み方

転職市場で評価される実務経験の共通ポイント
税理士として転職市場で高く評価される実務経験には、経験年数に応じた特徴があります。

実務経験2年未満では、基礎的なスキルが問われます。
基本的な法人税務や個人所得税、消費税の知識を身につけ、まずは一人でクライアントを任せてもらえるようになることを目指しましょう。
会計事務所は、事務所の規模感や代表によって育成方針や担当顧客の数、規模も大きく異なるため、1~2年で一通り出来るようになったと自信をもって転職活動をしてしまうと、手痛い挫折を味わう可能性もあります。焦らず、じっくり基礎固めの期間だと思って取り組むと良いでしょう。
また、後輩が少なく自分の業務に専念できるこの期間は、比較的残業も少ないため、税理士試験勉強とも両立しやすい期間です。この時期に合格すべき科目はしっかり合格しておくと、その後のステップも進みやすくなります。

2〜5年の経験者は、一人で複数の顧客を担当しながら、後輩のOJTやサポートを任されることも増えてきます。会計業界や税務の1年間のサイクルが分かってきたことで、得意分野ややりたいことが明確になるタイミングでもあるので、転職を考える場合はそれを軸に自分の目指す方向性に合った事務所を選択しましょう。
5〜8年の経験者は高度な案件にも関与するようになっていることも多いと思います。自身の資格取得状況や将来目指したい税理士像を考え、総合的な事務所か専門特化型の事務所か、独立するか今の会計事務所でパートナーを目指すか、どの道に進むかを検討する時期です。

転職成功のポイントは、事務所の雰囲気・待遇条件・規模・専門分野の4要素を総合的に検討することです。初年度の条件だけでなく長期的な成長可能性を見極め、自分の将来設計に合った環境を選びましょう。


大手・中小それぞれの事務所で得られる経験の違い
大手税理士法人と中小会計事務所では、得られる実務経験の質が大きく異なります。

大手では上場企業や大企業を主なクライアントとし、M&A・組織再編や国際税務など専門性の高い複雑な案件を扱います。チーム制による分業体制のため、特定分野の専門性を深められる利点がありますが、業務範囲が限定される傾向にあります。

一方、中小会計事務所では未上場の中小企業や個人事業主を顧客とし、一人で幅広い業務を担当するケースが多いです。税務申告から経営コンサルティングまで多様な経験を積めるため、若いうちから責任ある業務を任される可能性が高く、所長税理士から直接指導を受けられる環境も魅力です。

税理士としてのキャリアを考える際は、専門性を追求したいのか、幅広い経験を積みたいのかを考慮し、大手か中小かを選択することが重要です。
どちらの経験も転職市場では評価されますが、自分のキャリアプランに合った環境を選ぶことがポイントとなります。

大手会計事務所と中小会計事務所の違いや選び方については、こちらの記事も参照してみてください。
大手会計事務所と個人会計事務所の業務の違い
税理士事務所と会計事務所の違いとは?選び方のポイント徹底解説


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■実務経験を武器に、税理士としての未来を切り拓こう

税理士を目指すうえで欠かせない実務経験。
ただ時間を重ねるだけでなく、様々な業種、業界、規模の法人や個人事業主、資産家など、幅広く実際の税務書類作成や申告業務に携わることが求められます。多様な業務経験は知識の幅を広げ、資格取得後の活躍や転職にも大きな強みになります。

以下の記事では、税理士の仕事内容や難易度、将来性について解説しています。よければご覧ください。
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