大学院での研究を通じて試験科目の一部を免除できる制度を活用することで、より効率的に税理士の資格取得が可能となります。

本記事では、税理士試験における科目免除制度の詳細を解説します。独学での受験と比較しながら、科目免除制度のメリットや具体的な要件、効果的な大学院の選び方まで、実践的な情報を提供します。


【目次】
■税理士試験の科目免除制度のメリットと概要
　・税理士試験の科目免除で得られる効果
　・大学院で免除できる科目の種類と範囲
　・独学と大学院ルートの違いを比較

■税理士試験の科目免除を受けるための具体的な要件
　・会計学科目免除を受けるには
　・税法科目免除を受けるには
　・3科目免除を受けるには

■税理士試験に強い大学院の選び方
　・科目免除におすすめの大学院
　・試験や研究科ごとの対策
　・学費・教材費の相場と奨学金制度

■税理士試験では大学院の科目免除制度の活用が有効

大学院の科目免除制度とは、通常年1回開催される税理士試験を受験する代わりに、大学院に通って所定の学部で論文を提出して承認されることで、税理士試験に合格しなくても合格相当の扱いをする制度です。
会計系の学部に入学すれば会計科目、税法系の学部に入学すれば税法科目の一部が免除され、税理士試験で合格しなくてはいけない科目数を減らすことが出来ます。


・税理士試験の科目免除で得られる効果
税理士試験の科目免除制度を活用するメリットとして、大きく以下の2点が挙げられます。

1つ目は、受験科目数の削減による時間的な効率化です。
大学院での研究を通じて最大3科目まで免除を受けることができ、試験準備の負担を大幅に軽減できます。
2つ目は、専門知識の深化と実務能力の向上です。
大学院での研究活動を通じて、税務や会計の専門知識を体系的に学べます。これは将来の実務において、高度な税務相談やコンサルティング業務にも対応できる力となります。


・大学院で免除できる科目の種類と範囲
大学院の科目免除制度では、会計科目の免除申請の場合は1科目、税法科目の場合は2科目の試験が免除されます。これは、大学院へ進学して必要な科目を履修し、学位論文を作成して国税審議会へ申請することで可能となります。
申請時には、すでに税理士試験で1科目以上の合格実績が必要です。

免除対象の科目は、会計学の場合は簿記論と財務諸表論のいずれか1科目、税法の場合は所得税法、法人税法、相続税法、消費税法など、全9科目の中から2科目です。
ただし、税法科目については所得税法、または法人税法のいずれか1科目は必ず取得している必要があるため、税理士試験で合格していない方は選択を視野に入れても良いでしょう。


・税理士試験と大学院ルートの違いを比較
税理士試験と大学院を通じた税理士試験合格へのアプローチには、それぞれ特徴があります。
税理士試験を受けて税理士を目指す場合、全科目合格までの平均期間は約8年とされており、科目ごとに着実に学習を積み重ねる必要があります。
また、仕事と両立しながらだと思うように勉強時間が確保できず、もっと年数がかかる方も珍しくありません。
費用面では、通信講座や予備校で勉強しながら税理士試験を毎年受験した場合、予備校や教材費で年間30-100万円程度が必要です。

一方、大学院ルートでは、通常2年間の修士課程で最大3科目の免除を受けることができ、合格までの期間を大幅に短縮できます。
多くの大学院が社会人向けに夜間コースを設けており、仕事と両立も考えられたスケジュールになっています。
大学院の費用面では、年間100万程度、卒業までの2年間で約200万円の学費が必要となります。


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・会計学科目免除を受けるには
会計学の科目免除を受けるためには、大学院で会計学に関する修士論文を作成し、学位を取得する必要があります。その際、2年以上の在学期間と44単位以上の単位取得が求められます。
特に重要なのは、「論文指導Ⅰ〜Ⅳ」の計8単位を必ず履修し、修士論文の審査と最終試験に合格することです。また、出願時には研究計画書の提出も必須となります。

会計学分野での科目免除には、もう一つ重要な条件があります。
会計学に属する2科目のうち、いずれか1科目に試験合格していることが前提となります。この条件を満たすことで、修士論文の研究内容に関連する会計学1科目の免除申請が可能になります。

研究テーマは慎重に選定する必要があります。なぜなら、このテーマが免除申請できる科目と直接関連するためです。財務会計や管理会計など、自身の関心分野と将来の専門性を見据えて決定することをお勧めします。


・税法科目免除を受けるには
税法科目の免除を受けるためには、大学院で税法に関する研究を行い、修士の学位を取得する必要があります。
大学院では税法に関する科目を4単位以上修得することが求められます。なお、演習や論文指導の単位はこれに含まれません。

免除申請には、会計科目と同様、9つある税法科目のうち1科目に合格している必要があります。
これは必須科目とされる所得税法や法人税法に限らず、相続税法や消費税法など他の税法科目も対象となります。

申請手続きは税理士試験の受験申込期間内に申請を行い、認定手数料8,800円が必要です。
提出書類には研究認定申請書、学位取得証明書、成績証明書、修士論文のコピーなどが含まれます。また、指導教授による論文内容の証明書も重要な書類となります。


・3科目免除を受けるには
3科目免除を受けるためには、税法と会計学の両分野で条件を満たす必要があります。
まず、大学院で片方の修士号を取得し、卒業後に改めてもう片方の分野での必要単位数を確保、論文提出が必要となり、最短でも3年は必要です。
税法分野では2科目、会計学分野では1科目の免除が可能で、各分野の研究内容に直接関連する科目のみが免除対象となります。

一部免除を希望する場合は、税理士試験の申込期間内（例年4月頃）に申請を行う必要があります。
準備すべき書類には、研究認定申請書、修士論文の写し、学位証明書、成績証明書、指導教授の研究証明書が含まれます。書類は漏れなく準備し、期限に余裕を持って提出することが重要です。


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免除を受けるための課程や学部は、すべての大学院にあるわけではありません。
先述の通り、自分が免除を希望する会計科目や税法科目と紐づいている必要があるため、希望科目を決めてからその課程が受けられる大学院を探す必要があります。


・科目免除におすすめの大学院
名古屋商科大学大学院会計ファイナンス研究科は、「ケースメソッド」という米国のMBAで行われている授業形態を採用しており、参加者は主体的な議論やロールプレイで経営学を学ぶことができます。
税法と会計を合わせたコースも用意されており、3科目免除を狙いたい方にも向いています。
大原大学院大学は、簿記や会計の専門学校として有名な大原学園の系列です。高い実績を誇り、特に税法科目の免除に強みを持っています。
明治大学大学院グローバルビジネス研究科は、会計学分野での科目免除に定評があり、修了生の多くが税理士試験に合格しています。

これらの大学院は、実務経験豊富な教授陣による指導と、充実した研究環境を提供しています。
科目免除を目指す際は、他にも通学のしやすさや学費も考慮して大学院を選択することが重要です。


・試験や研究科ごとの対策
大学院に入るためには、もちろん受験をする必要がありますので、入試対策が不可欠です。
大学院、研究科ごとに試験科目や出題傾向は異なるので、志望校を決めたら個別最適化した学習を心がけましょう。

試験内容も含めた大学院の選び方については以下の記事で解説しています。
▶税理士試験には科目免除がある？利用できる大学院の情報も紹介！


・学費・教材費の相場と奨学金制度
大学院の学費は、大学によって大きく異なります。
標準的な2年間の学費は、国公立大学で約130万円、私立大学で約200万円～360万円となっています。

経済的な支援制度として、日本学生支援機構の奨学金があり、第一種（無利子）と第二種（有利子）を選択できます。
奨学金の月額は、5万円から15万円まで選択でき、2年間の総額で120万円～360万円の借入が可能です。また、多くの大学院では独自の給付型奨学金制度も設けており、成績優秀者や経済的支援が必要な学生向けの制度が充実しています。
さらに、第一種奨学金では、在学中に特に優れた業績を上げた場合、返還が全額または半額免除される制度もあります。

また、税理士資格の取得を推奨する会計事務所の中には、福利厚生の一環として授業料やテキスト代を補助しているところもあります。
補助を受けるための成績や試験合格までの所要年数などに厳しい基準を設けていることも多いですが、本気で税理士を目指して早く資格を取得したい方は、そういった制度のある会計事務所を探してみるのも良いでしょう。


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税理士試験の科目免除制度を活用すれば、大学院での研究を通じて最大3科目を免除でき、合格までの時間や負担を大幅に減らせます。
学費は2年間で200万円前後が相場ですが、奨学金や給付金制度を利用すれば費用面のハードルを下げることも可能です。過去の実績や通学のしやすさなどを考慮しながら、自身に最適な大学院を選択しましょう。


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