働く前に知っておきたい、労働に関する法律の話

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働く前に知っておきたい、労働に関する法律の話

転職サイトでたくさんの求人票を見ていると、書いてある情報のボリュームや募集条件は様々です。ハローワークを始めとした求人サイトにある求人は、法令で定められたルールで、定められた事項が記載されているはずですが、法律を知っている人が見ると怪しいものも紛れていることがあります。
法律で定められている労働条件が守られていない、明言されず詳細がぼかされている場合、残念ながら「ブラック企業」と呼ばれる環境の可能性があります。どの項目が、どういう条件で明示を義務付けられているのか知っておくことは、自身を守るためにも重要です。

今回は、仕事に関する法律の知っておきたいポイントについてまとめてみます。

■関連する法律の種類

求人や労働に関する法律は数多く存在しています。
「労働三法」と呼ばれる、基本的な労働に関する事項をまとめた「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」の他、賃金についてまとめた「最低賃金法」、性別による不利益を無くすための「男女雇用均等法」、雇用契約についてまとめた「労働契約法」など、関連項目によって細分化されており、各法律の内容全てを把握するのは専門家でも困難です。

ただ、どの法律がどの領域を定めているのか、この項目に関する法律があるのかどうかなどだけでも掴んでおくと、「あれ?」と思った時に調べやすくはなります。
労働待遇に関する基本的なことは「労働基準法」、男女で扱いが違うと感じたときは「男女雇用均等法」、給与に関して疑問に思った時は「最低賃金法」といったように、大枠だけでも把握しておくと良いでしょう。

■求人を探す時に知っておきたい関連法律

最初に労働に関する法律に触れるタイミングとしては、求人を探している時という方が多いでしょう。HPや求人媒体に掲載されている求人情報がきちんと法律に則っているか、求職者自身がチェック出来るようにしておくことは、自身を守るために大変有用です。
世間に公開する情報でさえ正しくルールが守られていないのに、閉ざされた社内ルールが良い環境であるケースは少なく、人事や法務が機能していない、経営陣が必要な法律を把握していないなど、端的に言えばブラックな環境である可能性が高いです。

労働と同様、求人を掲載する時にも法律で明示が義務付けられている個所があります。特にトラブルになりがちな個所をいくつか記載いたしますので、求人を探すときの参考にしてみてください。

〇月給の分からない年俸制
正社員で年俸制の募集をしているケースは珍しくありませんし、それ自体に問題はありません。実際に、ベースの月給が低く求職者に魅力的に映らないので、賞与を含めた年俸・年収を記載するというケースは珍しくないようです。
ただ、年俸のみの表記で月給が分からない場合は気を付けましょう。
月給が分からない状態だと、極端な例ですが年俸400万のうち半分の200万が賞与、月給として200万を12分割している…などの可能性もゼロではなく、その場合生活に支障が出るパターンもあるかもしれません。(ちなみに、200万円を12分割した月給の場合、一般的な週40時間労働だと最低賃金を下回る都府県も出てきます)

〇残業代の支給方法
固定残業(みなし残業)制度を採用している場合、基本給と固定残業時間、残業代を記載する必要があります。
「月給に固定残業代20時間を含む」等のように、残業代の内訳が分からない表記はNGです。残業代を除いた基本給が分からないと、最低賃金は超えているか、残業代に割り増し手当が加算されているかなどの確認が出来ないためです。同様に、「固定残業代として月3万円を支給」という表記も、その3万円が10時間分なのか30時間分なのかが分からないと、残業代としての基準をクリアしているかが分かりません。
また、正社員の残業時間については、労働者と36協定を結んだ状態で月45時間、年間360時間が上限とされています。そのため固定残業代として45時間以上が設定されている求人は注意した方が良いでしょう。

〇勤務場所や業務範囲
以前は入社時点の勤務予定地・配属予定のみの記載でOKでしたが、2024年の法改正により、入社後の配置転換可能性がある場合はその候補についても記載が必須となりました。
入社後、「配属されたのが募集されていた部署・勤務地ではない」というトラブルが後を絶たないことが理由として考えられます。

〇年齢や性別を制限した募集
特定の業務以外、原則として年齢や性別を制限した募集は禁止されております。「特定の業務」とは、例えば子役タレントや海外支社の現地宗教上の理由など、特定の年齢や性別しか対応出来ない業務です。
他にも会社の定年以下を上限とする募集、経験を不問とすることで若年層(新卒など)の募集などはありますが、いずれも認められるための条件があり、企業側の希望だけでは通らないものです。

■法律が守られてないと感じたら…

「残業した日の勤怠が改ざんされていて残業代が支払われない」
「労働契約書にある内容と業務や働き方が全く違う」
「男女で任せられる仕事や社内の扱いに明確な差がある」などなど…
働いていて、これって法律違反では?と感じることがあれば、一人で交渉しようとせず、外部の専門機関に相談してみましょう。
具体的には下記のような相談窓口があります。

1)労働基準監督署
2)総合労働相談センター
3)労働組合
4)弁護士


一番有名な窓口は労働基準監督署ですが、労働に関する相談は広く受けてくれるものの、聞き取り調査で具体的な証拠が出ないと是正には動いてもらえない事もあります。相談前には証拠となる音声やデータを、なるべく多く揃えておくなど事前準備が必要です。
また、労働基準監督署はあくまで「是正を指導する」行政機関です。残業代が未払いだった、ハラスメントがあった等認められても、会社に「正しく整えるよう指導する」のみで、そのために具体的な動きをしてくれるわけではありません。

そういった交渉や仲介役をまとめて引き受けてくれるのは弁護士になりますので、確実に解決するためには弁護士への相談がお勧めです。ただ、相応に費用はかかるため、まずは法テラスなど無料相談出来る所に相談したうえで、弁護士に依頼する甲斐がある内容かどうか検討しましょう。
労働基準監督署に相談して大きな是正・指導が入ると、行政指導で社名公開されるなど、会社の業績や一緒に働く仲間に影響を与える可能性もあります。特に在職中の場合、社内に賛同者や同じ状況に置かれた仲間が少なく、是正が入ることによって周囲が敵になる可能性がある場合、初めから内密に相談・解決まで可能な弁護士に依頼する方が良いかもしれません。

■まとめ

「これはおかしい」と気付けるようになるためには、正しい知識を持っている必要があります。すべてを把握するのは難しいですが、法律があるということを知っておくことで、家族や友達と仕事の話をしていて疑問に思った時など、調べるきっかけになれば幸いです。

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