求人票で見かける「IPO準備企業」って何?

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求人票で見かける「IPO準備企業」って何?

経理職の求人票を見てると、たまに「IPO準備中の企業です」というフレーズを見かけることがあります。「IPO準備中企業」とはどういった状態で、一般的な経理事務とは何が異なるのでしょうか?
IPO準備企業で働くメリット・デメリットを考えてみましょう。

■そもそもIPOとは

「Initial(最初の) Public(公開の) Offering(売り物)」の略で、「新規公開株式」または「新規公開株」「新規上場株式」などと表されます。代表取締役や一部役員のみが保有している株式を一般に公開し、売買出来るよう証券取引所に上場する事を指します。
上場市場は証券取引所ごとに企業規模に合わせ2~3の市場に分かれており、東京証券取引所では現在「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つに分類されます。それぞれに上場基準、上場後の維持基準があり、プライム市場が最も規模や収益が大きく、厳しい基準をクリアした企業が集まっています。新規上場した企業は事業持続性が未知数であることから、大半はグロース市場に参入することになり、最初からプライム市場に行くことはほとんどありません。

上場企業は、一度市場に入ったら恒久的に上場を続けていられるわけではなく、上場状態を維持していくための基準も設けられているため、より一層の営業努力が求められます。
また、非上場の時は株式購入者(株主)も企業創設者の目の届く範囲、いわゆる内輪向けとなっている事がほとんどのため、多少の業績悪化や不始末は社内事情として片づけられることもありますが、上場されると誰でも株式を購入し、株主になることが出来るようになります。
株主となる投資家たちにとっては、社内の事情など知ったことではありません。出資に対して還元出来るように利益を出していくこと、経営状況を説明出来るような正当性と透明性が求められます。
そのため、上場準備の段階でそれらを整えておくことが必要になり、それらの一連の業務を「IPO準備」と呼びます。

■IPOには段階がある

IPO準備企業と一口にいっても、準備に向けた段階によって業務内容や経理の役割は異なります。一般的に準備を始めてから順調に行って3年ほどかかると言われており、その内訳は以下のような呼び方で分類されます。

・直前々期以前(n-3期)
→IPOコンサルタント等と提携し、IPOの準備を進めるために整えないといけない内容や課題(事業計画や資本計画)を精査、策定する期間

・直前々期(n-2期)
 →監査法人による監査を受けて上場基準に必要な制度や規則を制定する期間

・直前期(n-1期)
 →実際に提出する資料の作成や、直前々期で制定した規定の運用、事業計画の実現性など、上場後のシミュレーションに近い動きをする期間

・申請期(n期)
 →証券取引所に申請を行い、上場企業としてふさわしいか審査を受ける期間

■IPO準備企業で働くメリットとデメリット

【メリット】
n-2期に入ると監査法人とのやり取りが増え、実務としても上場基準に対応した会計制度の整備、経営計画や売り上げ・予算の管理、資金調達など、財務経理に関する業務が一気に増えるタイミングですが、もちろん従来の経理業務がなくなるわけではありません。それまでの体制や人数にもよりますが、従来の経理部人員では手が回らない状況になり、増員を検討する企業が増えてきます。

経理の業務の中で、「何かをゼロから選定・策定・作成する」機会は、それこそベンチャー企業で初めての経理スタッフとして雇用されるようなケースでもない限り、あまり多くありません。新しい業務を創る経験は、会計経理の仕事をより深く理解するきっかけになることでしょう。

IPOフェーズで経験する業務は、IPOを目指していないと発生しない業務も多くあります。また、IPOを目指している企業の中には、業績悪化や必要なフローが構築できないなど、様々な理由で断念することも珍しくないので、フェーズが進めば進むほど経験者も減り、希少性は高まります。今後も経理関係の仕事を続けていきたいと考えている方には、IPO業務の経験は転職の際にもアピールポイントになるでしょう。


【デメリット】
この点をデメリットと感じるかどうかは人それぞれかと思いますが、一番は「仕事の量が多く残業が増えがち」という点です。

上述の通り、今まで行ってきた経理業務は何も減らないまま業務が増え、しかもその業務は日常経理よりも複雑です。外部から経験者を採用したりコンサルタントを入れたりしても、大半の人にとっては初めての業務ですから、試行錯誤しながらの作業になるので時間もかかります。

また、自社内だけではなく、監査法人や証券会社等の関係機関も巻き込んだ業務も多いので、その分締め切りもシビアです。何かの作業が遅れると後工程全てに影響が出て、ひいてはIPOの進捗にも関わってくるため、「どれだけ残業してでも今日中に終わらせないといけない」という日も出てくるでしょう。
もちろん、そうならないように日々調整していくことが大事ではありますが、万が一の場合はきちんと仕事にコミット出来るかどうかはよく考えておく必要があります。

■おわりに

IPO関連業務というのは、限られた会社の限られた期間でのみ発生する業務。その会社のIPOが成功したとしても頓挫したとしても、そこで得た経験はあなたの会計経理キャリアの中で間違いなく強みになるはずです。
経験出来る機会はさほど多くはないので、チャンスとタイミングがあったらチャレンジしてみるのも良いかもしれません。


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